A Stolen Life / (c)2020 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN <「特権社会」の中国で庶民が運命を変える唯一の機会であり、最も平等・公平な競争と考えられていた全国統一大学入試でまさかの不正> 香港国家安全維持法が世界で最も注目されていた7月初め、中国国内で最も関心を集めていたのは山東省の替え玉入学事件だ。 2004年、山東省冠県の女子高校生・陳春秀(チェン・チュンシウ)は大学入学試験を受けた。貧しい農家出身で、家には電話もない。だが、勤勉な彼女は成績優秀で、大学に合格して運命を変えると信じ、家族みんなの期待も集めていた。 しかし大学受験は失敗。それから16年間、彼女はずっと自分の勉強不足を責めてきた。貧しさのため勉強を続ける費用がなく、あちこちで出稼ぎを続けた。36歳を過ぎ、現在は幼稚園の教師をしている彼女は最近、社会