伊藤若冲も間違えた! 日本絵画のなかには、「怪物を描くつもりではなかったのに、図らずも怪物になってしまった」という面白いものがある。 以前、日経サイエンス2017年10月号で橋本麻里氏と対談した折に気づいたのだが、伊藤若冲が『池辺群虫図』(宮内庁三の丸尚蔵館所蔵)に描いたコガネムシにも似た動物が、その問題の「モンスター」である。 この「虫」には、昆虫の「前胸」に相当する部分がない。昆虫のいわゆる「胸」と言われる部分は通常、前胸、中胸、後胸の3つの分節からなっていて、そのうち、翅が生えていない一番前の分節を「前胸」というのだが、その部分がごっそり欠けているように見えるのだ。 そればかりか、膜翅(甲虫の後翅をこう呼ぶ)が2対もあるという、突然変異でも起こしたかのような形態を示している。 前胸ができるはずのところに中胸ができ、中胸ができるはずのところに後胸ができているいっぽう、本来の後胸は、その
![なぜ、この世に「怪物」は存在しないのか?〜若冲からまど☆マギまで(倉谷 滋)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/b1463495cd1ec644e2d93048692c2252512b58c9/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fgendai-m.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2Fb%2F9%2F1200m%2Fimg_b90ab61e9d412080a2b9513eb118d6d1116280.jpg)