1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 1 ああ、蒸すわね。50の男にはちょっとつらいかも。植物の息がこの森の空気を満たして、ああ、蒸すわあ。今日もお目当ての原っぱは見つからなかった。だけどそれっていつものことだから私、気にしない。足場は良くないけれど、関係ないの。この45年の積み重ねの上では関係ないのよ。ソールを通してしっかり凹凸を足の裏がつかまえているのを感じる。そして完全にからだをコントロールできているっていう実感がある。からだのあらゆる要素がみんなきちんと組織されている、地面や重力と、私のからだがなめらかに調和している。からだだけじゃない、右手に握った小太刀の剣先、刃の面がわずかな狂いもなくあるべき角度と位置ですべり込んでいく。この感覚をいつでも得られるようになったのはほんの5年ほど前から。そんな感覚があるってことに気づいたのは20歳くらいのとき。ときどき一瞬、