今を去ること二年前、森見登美彦氏は締切太郎を召還した。 締切太郎の召還とは「並み居る締切次郎たちを一斉に投げ出す」という荒技であり、人生にそう何遍も使える手ではない。乱用すると信用をなくす。しかし当時の登美彦氏はくたばりかかっていたため、やむを得なかった。 「複数の敵と戦う場合、決して囲まれてはならない」 登美彦氏は体勢を立て直しつつブツブツ言った。 「狭いところへ誘いこんで、一匹ずつやっつける。戦いの基本である」 そういうわけで、締切次郎たちは一列に並んだのであった。 つぶらな瞳に涙を溜めて―。 そして登美彦氏は一匹目の締切次郎をやっつけた。 『聖なる怠け者の冒険』である。 現在、登美彦氏は二匹目の締切次郎と戦っている。 『有頂天家族』の第二部である。 なかなか愉快な仕事である。 愉快だからこそジックリやる。 したがって、いつ終わるのか分からない。 そんな登美彦氏の机上の戦い(の遅延)と