円 劉慈欣短篇集 作者:劉 慈欣早川書房Amazonこの『円 劉慈欣短篇集』は、『三体』の著者劉慈欣による本邦初の短篇集である。中国での短篇集の翻訳かと思ったら、作品選択は原著者側によるもので、どのような意図があるのか訳者にもわかっていないらしい。ただそれで謎のセレクションになっているかといえばそうでもなく、1999年のデビュー作から2014年の作まで、キャリアを概観できるような作品集(13篇)になっている。これがまたおもしろいんだ。 劉慈欣の短篇が素晴らしいのは映画『流転の地球』の原作にもなった「さまよえる地球」をはじめとした邦訳作の数々からとっくに知っていたつもりだったが、通して読んでみるとそれでもまだナメていたなと実感させられた。科学と芸術の意味を高らかに謳い上げ、人類の歴史やその本質に接続してみせる、そんな『三体』の要素を凝縮したような高密度の短篇ばかりで、読み終えた時の満足感はと