(日経新聞、06.12.9) 指定管理者制度の導入が進む公立ミュージアムで、運営にひずみが生じ始めている。館を支えてきた学芸員が削減され、活動の質が低下。コレクションを寄託した市民から返還を求める声も出てきた。こうした中で制度が内包する問題を克服しようと、自治体が解決に乗り出す動きもある。 ◇ ◇ 「信頼できる学芸員がいなくなるなら、預けていた美術品を引き揚げる」。伊丹市立美術館(兵庫県)には、シャガールや長谷川潔といった美術作品の寄託者から、「通告」が相次いでいる。 ベテラン姿消す 同館には今年度から指定管理者制度が導入され、従来の運営者だった財団が3年の期限で指名された。市はこれを機に、派遣していた学芸員3人を、毎年一人ずつ市の別の部署に異動させることを決めた。4月、まず一人が去った。2年後には国内有数といわれる風刺画・版画コレグションを熟知し、活用する人材はいなくなる。