「本書は災害復興についての本ではない。災害の最中にーー警察や消防士たちが到着する前に、レインコートを着た記者たちがやってくる前に、惨事に対する何らかの見方が押しつけられる前にーー何が起こるのかについて述べた本である」 災害・テロ・事件・事故。もしもの時の、とっさの判断が本書のテーマである。有事に何をすべきかを並べたマニュアル的な内容ではない。なぜ、人は非常時に誤った判断をしてしまうのか。その背景には、人がそもそも持っている、どのような思考のクセが影響しているのか。そんな根本から考えていくスタンスが特徴だ。さまざまな惨事から生き延びた人々へのインタビューに加え、社会学者、心理学者、脳科学者、神経科医、テロ対策専門家、警察官、消防士など幅広く意見を求めて得た知見を、まったく他人事に思えないエピソードの数々を通して伝えてくれる。 非常事態にまず起こりがちなこととして挙げられるのが「否認」である。
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