『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』(宮崎哲弥 著)新潮選書 本書は「私は若い頃から単語帳を作るのが好きだった」と始まる。続いて『語彙ノート』という名の単語帳の写真が掲載されている。宮崎哲弥の活躍は広い分野に及ぶが、仏教研究家としてもよく知られる。仏教語の漢字の読みは呉音である。宮崎がこれを楽に読めるわけがよく分かった。 本書でいう「上級語彙」は言語学者鈴木孝夫の分類による基本語彙(日常生活の中で使う言葉)・高級語彙(研究者などが用いる難しい言葉)の「高級語彙」に触発されたものだ。高級語彙というほどではないが、少し硬い本や講演などに使われる言葉を宮崎は上級語彙とした。これが乱れていたり誤用されたりでは、思考や文化は衰弱するだろう。「ビジネスの世界ではわけのわからないカタカナ洋語が〈席巻〉し」と批判した後で、「席巻」について文学者の用例も紹介しながら解説している。 解説文中に、