『知ろうとすること。』を読んで、僕の心に一番強く残ったのは、「トンデモ論に対して、正しいデータを出して、誠実で揺るぎない態度で撃破することが大切だ」という趣旨のところだった。まさにそれを文字通り実践した本に出合った。それが本書である。 「江戸しぐさ」については、昔、確か地下鉄の広告で見かけた記憶がある。「傘かしげ」「肩引き」「こぶし腰浮かせ」が3大江戸しぐさと言われているようだが、「傘かしげ」(すれ違うとき、相手も自分も傘を外側に傾けて、一瞬、共有の空間をつくり、さっとすれ違う)は、確実に絵で見た記憶が残っている。その時は、多少の違和感は感じたものの(江戸時代の文学作品等をかなり読んでいたが、その中では江戸しぐさが全く出てこなかったので)、「へえーっ、そうなんだ」と思ったぐらいで、それ以上深く詮索しようとは考えなかった。著者は、第1章で「江戸しぐさ」を概観した後で、個々の「江戸しぐさ」を丁