私は天気に敏感だ。 特に山行前には入念なチェックを欠かさない。 いわゆる「てんくら」などの天気予報は見ることもなければ信用することもない。IMOCやGPV、そしてJTWCなどのサイトで天気図・高層天気図・高層断面を読み漁り、自分で天気を予測するのだ。 そして山行中に天気が崩れる傾向にあると、登山を中止する事が多い。 それは仕事であっても個人的な登山であっても同じことだ。 「慎重すぎない?」 「とりあえず現地に行って決めれば?」 そう言われることも多いが、自分は断固として首を縦に振ったことはない。 あの若かりし頃の、苦い思い出が頭を過るからである。 1989年10月8日。 私は涸沢ヒュッテから奥穂高岳を経由し、岳沢ヒュッテへと向かっていた。 登山を始めて2年ほどの女性4名を連れて。 そう、全国各地で多くの遭難者と立山真砂岳で8名の死亡者を出した「大量遭難事故」と同日、まさしく「その日」であっ
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