■目次 (1) はじめに (2) 他者からの呼びかけの相対化 (3) 「正義」から「感情」への逃走 (4) 「感情の錬金術」としての天皇訪韓肯定論 (5) 法的責任の概念の隠蔽 (6) 道義的責任の無条件の肯定 (7) おわりに (1) はじめに 高橋哲哉の「2010年の戦後責任論」については、すでにブログで批判したが(「「慰安婦」立法と「国民基金」の連続性を問う」第2章第7節~第8節)、それにしても高橋はいつからこんなことになってしまったのだろう?というわけで、高橋哲哉『状況への発言――靖国そして教育』(青土社、2007年)を読んでみた。 本書には2004年4月から2007年9月までの間の高橋の論考が収められているが、その中で私が強い反発を覚えた最初の論考が、「2010年の戦後責任論」でも言及されている「応答の失敗」(初出は『現代思想』2005年6月号)である。この時期の高橋は、『靖国問