ASCO2008(第44回米国臨床腫瘍学会)で藤原さんは、自らが開発したテロメライシンという名を持つ新しいがん治療薬について報告した。岡山大学発のバイオベンチャーであるオンコリスバイオファーマ株式会社が米国で行っている第1相臨床試験のデータだ。この段階の臨床試験は安全性を確認することが目的だが、欧米や豪州などの研究者や大手の製薬企業は、テロメライシンがこれまでにない作用メカニズムを持つ薬剤であることに強い関心を寄せている。 テロメライシンは、風邪の原因になるアデノウイルスの遺伝子を改変したもので、がん細胞の中だけで増えてがん細胞だけを破壊する。がん細胞の中で活性化するテロメラーゼという酵素を標的にしてがんを破壊する薬で、いわゆる分子標的薬といわれる薬剤と似た性格を持っている。マウスを用いた前臨床研究で、腫瘍を消失したり縮小する作用があることが確認されている。 また、別の動物実験で、原発巣に