広島空港前の広場。人の背丈よりも大きい円柱が、石畳の地面に突き刺さる。 ほぼ垂直に立つものや、地を這(は)うように横を向くもの。様々な角度で立つ32本の円柱は、世界各地の国際空港や北極・南極点に向けて設置されている。 1993年の空港開港に合わせ、「平和な広島」にふさわしいモニュメントとして制作された作品だ。作者は、広島市出身の彫刻家・岡本敦生さん(65)。「水平線の彼方(かなた)でなく、地面の向こう側に世界の国々があると実感できれば、この丸い地球を立体的に、より身近に感じられると思った」と話す。 地球は正確には楕円(だえん)体のため、円柱の角度計算は難航したが、各地点の緯度・経度、標高から、岡本さん自ら算出した。 各円柱は直径70センチ、長さ4.5メートル。指し示す地点周辺で採れる石や、その土地から連想する金属を使用している。例えばケープタウン国際空港を指す円柱には、アフリカ産の黒御影石