小津の個性は小津だけのもの 僕がここであえて小津を語るのも今さらなんですが、最初に名前を覚えたのは、高校生の頃に映画に対する知識を色々取り入れたいと思っていた頃に読んだ本です。おそらく新書で出ていた佐藤忠男さんの『ヌーベルバーグ以後 自由をめざす映画』(中公新書)か岩崎昶さんの『映画の理論』(岩波新書)でしょうか。当時の映画青年のご多分に漏れず、僕もそういった書籍を読んだりした中で、小津安二郎や溝口健二という人がいたんだと知って、教養として観なきゃなと思っていました。 ただ、当時は小津の映画は二番館でやっているシロモノでもありませんし、東京のフィルムセンターに行くか、図書館での上映とか、ある種の教養として観せる催しがたまたまないかぎりは、観られなかったですね。だから最初に観たのが高校生の時か浪人の時かはっきりしないんですが、夏休みに映画を観る目的で東京へ来ていた時に『淑女と髭』だったかな?