ベーシックインカム(BI)への支持が広がらない最大の理由は、「生産していないのに、どうして消費が許されるのか」という素朴な疑問だろう。ルトガー・ブレグマン著『隷属なき道』は、面白さに満ちていたが、これには答えていない。「お金を集めても、消費も投資もしない者がいる」という論理とセットにしないと、社会制度としてBIが不可欠になるという主張は、成り立たないように思う。 ……… ルトガーの主張のうち、「貧困の解決には、お金を与えるのが一番」というのは、なかなか説得力がある。ホームレスに3000ポンドを与える実験、ケニアでフリーマネーを与える援助を取り上げつつ、歴史をたどり、カナダ・ミンガムでの試み、50年前の米国での保障所得実験、ガルブレイスやトービンらが賛同したニクソン政権の家族支援計画、そして、福祉の失敗例とされるスピーナムランド制度の評価が覆されたことなどを語る。 残念ながら、家族支援計画は