土光敏夫は石川島播磨重工業や東芝の社長のあと経団連会長や第2臨調会長と次々難しい仕事を引き受け実績を残す一方、その質素な生活ぶりで「メザシの土光さん」としてつとに知られており、経済界のみならず政界からも戦後最も尊敬されたリーダーの一人といってもいい人物である。 作家の城山三郎は土光を「一瞬、一瞬にすべてを賭けるという生き方の迫力、それが80年も積もり積もると、極上の特別天然記念物でも見る思いがする」と評している。 ソニーの創業者井深大も「今の日本で最も尊敬できる人は誰かと聞かれれば、無条件に土光さん」と絶賛している。(「清貧と復興」出町譲 文芸春秋) 土光敏夫の凄さは3つある。 まずなんといってもだれも真似ができない凄さは、その「無私」の思想にある。何事にも「私」がない。すべての発想や行動の原点は「己」ではなく「公のため」即ち「世のため人のため」にある。 土光の住んでいた家は日本が太平洋戦