大学まで徒歩十分。築四十年。家賃三万二千円。壁が薄くて音は筒抜け。入居者は全員学生。朝日が眩しい東向き。大学の周りが畑ばっかりなのにびっくりする。ハチミツとクローバーという人気少女漫画の冒頭に出てくる、主人公のアパートの紹介とほとんど同じ紹介であるこの文章だけれど、これは紛れもなく僕が今現在住んでいるアパートだ。 六年と少し前、このアニメはスタートした。当時高校三年生で、受験まっただ中だったはずのぼくは、けれどどこの大学に行くかも決めずにぼんやりと過ごしていた。ただ何か自分の存在が宙に浮いているような、そんな気だけが僕の心の中を占めていて、生きているのか死んでいるのか、自分でも曖昧模糊として判断が下せなかった。そんな中、何故か僕がいたく気に入って、毎晩放映時間、日付を一時間こえた二十五時からのこのアニメを観ることだけが、僕のほとんど唯一の楽しみだった。 気づくと、僕は大学生になっていた。何