ボツイチ…。60代以上の女性の間で広がりつつあるこの言葉をご存じだろうか。漢字で書いたら“没一”で、「夫に先立たれた経験が1回ある」という意味だ。“バツイチ”という言葉は離婚経験者の肩身の狭さをぬぐいさった感があるが、果たして“ボツイチ”は未亡人の何を変えるのだろう。栃木県に住む藤堂美代子さん(64才)に、その暮らしぶりと胸の内を聞いてみた。 藤堂さんの夫(享年57)は急に体調が悪くなり、病院で検査を受けたら末期の胃がん。3か月後には帰らぬ人になった。藤堂さんは10年前の別れを話すと、今も涙がにじむ。 「ものすごく元気だった人が、日を追うごとに悪化して、最後は食べるものも口に入らず、言葉を発することもできない。 そんな夫を見ているのは、身を裂かれるような苦しみでした」 だから、医師の「ご臨終です」を聞いた時は、これで夫は苦しみから、そして自分は看病から解放されるとホッとした。 「でも、その