知能はどこまで遺伝の影響を受け、どこまで環境の影響を受けるのか──。この問いを突き詰めていくと、「子育ての努力に意味があるのか」という問題に行き着く。はたしてその答えはどうなっているのか。最新刊『無理ゲー社会』で、「知識社会における経済格差は、知能の格差と同義だ」と指摘する作家・橘玲氏が、行動遺伝学の最新知見をもとに、パーソナリティにおける遺伝と環境の影響度合いについて紹介する。 * * * 行動遺伝学は一卵性双生児と二卵性双生児のちがいをもとに、身体的特徴から性格や認知能力、身体的・精神的疾患まで、ヒトのさまざまな性質の遺伝と環境の影響を調べる学問分野で、半世紀以上にわたって膨大な研究を積み上げてきた。 行動遺伝学を語るときに欠かせないのが、2000年に行動遺伝学者エリック・タークハイマーが発表した「3原則」だ。 第1原則:ヒトの行動特性はすべて遺伝的である 第2原則:同じ家族で育てられ