認知症患者が被告となる刑事裁判で、精神鑑定の実施を認めるか否かの対応が裁判所によって分かれている。高知地裁では、弁護側が医師の意見書を示して鑑定を求めたのに裁判官が拒否し、控訴審で「法令違反」と批判を浴びた。一方、大阪地裁では裁判官が被告の言動をみて自ら鑑定を提案。認知症についての理解の温度差が判決にも影響している。【原田啓之】 2015年8月、女性(71)は高知市内の青果店でブドウなどを万引きしたとして逮捕された。女性が事件直前、他の2店舗でも万引きを繰り返していたことを弁護人の林大悟弁護士(東京弁護士会)が不審に感じ、医師に面会させると、診断は「認知症」だった。 翌年1月、林弁護士は高知地裁の公判で、「認知症で心神喪失の可能性があり、正式な精神鑑定が必要」とする医師の意見書を提出。地裁に鑑定の実施を求めた。 しかし、年配の男性裁判官は「転勤間近なのに、今ごろ言われても」と顔をしかめ、検