<医師・科学者としてノーベル賞を受賞するまでになった筆者だが、悔やんでいることはいくつもあるそう> 後悔は少なからずある。私は最近、医師・科学者としてのキャリアを振り返る回顧録を書いた。本には書かなかったけれど、執筆の過程ではおのずと、これまでの人生で悔やんでいることをいくつも思い出す羽目になった。 特に後悔せずにいられないのは、楽器をマスターしなかったことだ。若い頃に打楽器やピアノに手を出したこともあったが、長続きしなかった。医師になりたいという夢の実現を急ぎ過ぎたようだ。 それでも、自分が一流の音楽家だったらよかったのに、という思いを忘れたことはない。実は、時々その妄想を実践に移すこともある。 数年前、大学キャンパス内のレストランに行ったときのこと。テーブルに案内されるまで、ピアノが置いてある前の椅子で待つことにした。すると、ピアノが自動演奏を開始した。私はすかさず鍵盤に手を乗せ、音楽
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