完成されたものって得てしてつまらなくて、退屈で、起伏がなくて、そう簡単に大衆には振り向いてもらえないものが多い気がする。 子が音楽をやっているのだが、あれは音をひとつ出すだけで大変なものなのだな。押せば鳴る楽器なんてものはなく、たとえ電子楽器だとしても自然な発声をさせるのは相当な訓練が必要であることを、子の練習を通してやっと実感した。 それがわかったとたん、あらゆる演奏の裏側に積み上げられてきた膨大な時間が見えてきて、今までつまらなくて、退屈で、起伏を感じられなかったクラシック音楽がいかに素晴らしいものなのかを知った。 大変さを経験した者にしかわからない醍醐味。それは完成されたものへの自然なリスペクト。部外者には全く見えない小さな小さな爪痕から、その背後に隠れた壮大なストーリーを受け取って自然と涙できる。 そして、経験のない者らには、なんの爪痕もないツルッとした完成形に見えてしまう。 素晴