久々に読後に痺れるような余韻の残る作品を読んだ。 フワフワとした酩酊感に襲われる、どことなく非現実的で心地よい気怠さ。 ほうっと溜息をつき、物語が終わってしまったことを残念に思う。 『マルドゥック・スクランブル』との出会いは、もう10年ほど昔になるだろうか。 大阪は天王寺の書店で、評判の良さから目についたときに購入した。 当時たしか新装版が出始めた頃で、新装版で買い揃えるべきかどうか、少し悩んだ記憶がある。 結局、一番古い版で(初版と言う意味ではない)買い、そのまま本棚の数ある積読本の一つになってしまった。 三冊の本なのに、2巻と3巻が売り切れていて店頭になかったためだ。 そうして非常に長い年月を、忘れられ、あるいは積読の罪深さゆえに目を逸らされ続け本棚に並びながらも読まれることなくひっそりと佇んでいたこの作品は、2018年になって、再び私の手元へと戻ってきた。 きっかけは友人である井の中