まずは『太陽の王子ホルスの大冒険」が作られた時代背景から考えてみたい。制作が始まったのは1965年、公開されたのは1968年、大作とはいえ、日本のアニメで3年もかけるのは異例のことである。1965年といえば、世界史ではアメリカがベトナム戦争に直接介入し始めた年として、世界史に記憶されている。1968年にはフランスで5月革命が起き、チェコスロバキアではプラハの春と呼ばれる変革運動があり、アメリカでは黒人解放運動のリーダーだったマーチン・ルーサー・キング牧師が暗殺されている。一方、ベトナム戦争は激化していた。 そんな時代の作品である。『ホルス」に先立つこと3年前の1962年、大塚康生は東映動画労働組合の2代目書記長に選ばれた。この時の副委員長が高畑勲。大勢の人間が幾つかのグループに分かれて制作する長編アニメの現場において、労働組合の結成は必然的なものだったとも言える。 大塚は「作画汗まみれ」の
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