社会学者が自らの研究を通して、「多様性を持つ組織こそが、変化の激しい市場環境に順応でき、革新的な成果を生み出せる」という結論を導く。著者はこの結論のために、調査対象の組織に入り込んで人々の行動様式を記録する「エスノグラフィ」と呼ぶ調査手法を用いた。本書では、社会主義国家の工場など三つの組織でエスノグラフィの結果を紹介する。組織の中で何が起こったかを詳しく紹介しており、読者はあたかも調査研究に参加する感覚で読み進められる。 著者が指摘する強い組織とは、異種のスキルを持つ個人が横の関係を築き、個人の評価軸も一律でなく、それゆえに摩擦や不協和音が生まれる組織を指す。権限は現場に委譲され、個々のスタッフは縦の指揮命令より横の連携で生じる責任感に基づき行動する。 事例のうち、1980年代のハンガリーの機械工場での調査が興味深い。現場の従業員らは勤務時間外の副業を認めた当時の政策に従い、自分たちで経営