論が立つ人ほど、大きな間違いを犯しがちで、「日本の年金制度は給付を子世代の保険料で賄う賦課方式。その子世代は少子化で減少。よって年金制度は崩壊の運命」といった論法を振り回し、世の中に誤解と不安を広げてしまう。そして、「積立方式に転換し、お金を貯めて子世代に頼らないようにすべきだ」と畳み掛ける。制度や経緯を軽視する経済学者には、困ったものである。 そのあたりの事情を赤裸々に綴ったのが、このほど、慶應義塾の権丈善一教授が著した『ちょっと気になる社会保障』である。権丈教授は、隘路に迷い込みそうだった日本の年金改革を、正道に引き戻すのに大きな役割を果たされた。社会保障を学ぶ人に限らず、経済を通じて国民生活を改善したいという志を持つのであれば、ぜひ、書店の福祉のコーナーまで足を伸ばし、手に取ってもらいたい一冊だ。(へのへのもへじが目印) ……… 論理が完璧でも、誤謬に陥ってしまうのは、論理は、切れ味