先月の大相撲春場所は、稀勢の里関の連続優勝で幕を閉じました。22年ぶりとなる新横綱の優勝というトピックもさることながら、13日目に左腕を負傷しながらも出場を続け、優勝決定戦に勝利したというドラマチックさが、注目を集めたかと思います。 とはいえ、競技者だった立場からすると、いい意味でもっとシンプルにスポーツを見てほしいという気持ちがあります。「スポーツは根性が大事。痛くても我慢して頑張った」という姿を良しとする見方が世の中に蔓延(まんえん)することは、ちょっと怖くも感じます。 もちろん今回の稀勢の里関は、自分の体の状態を確認して「このまま相撲を取り続けても大丈夫」と判断して出場を決めたのでしょう。それに対し、見る側が「すごいね」と言うのはいいかとは思いますが、彼の決断が良かったか悪かったかは周囲が評価するものではない。「優勝をした」という結果そのものを褒めてあげることが必要なのではないで