今回は久しぶりに漢文から。『菜根譚』という、明朝末、日本で言うと江戸幕府がちょうど開かれた頃の書物。この書物には含蓄のある言葉が多数収録されているのですが、今回は「名誉も地位も無い楽しみ」と「飢えず寒からずの憂い」について書かれた章から。 目次 名誉も地位も無い楽しみ 飢えず寒からずの憂い 現代日本も『菜根譚』の時代と変わらない 《東京都青梅市:JR青梅駅裏「永山公園」》 名誉も地位も無い楽しみ これから引用しようとする段は二つの部分に分かれていて、まずは前半。 人知「名位」為樂、不知「無名無位之樂」為最眞。 人々は、「名誉や地位」(名位)が楽しみであることを知っているが、「名誉も地位も無い楽しみ」(無名無位之樂)が、最も真実(※)の楽しみであることは知らない。 ※「最も真実」とは日本語として不自然ですが、他に適切な言葉が思い浮かばないので直訳としました。 富裕層は「名誉や地位」を得て、そ