携帯電話のアドレスは残ったままだ。おそらくこの先、ずっと、消せないかもしれない。 中村勝広。 阪神の現職GMが遠征先の宿舎で急死してから3週間、タイガースは再び東京ドームにやってきた。広島の敗北により、棚から落ちてきたCS切符。1勝2敗の試合内容を語ることに意味はないだろう。選手はプロフェッショナルだった。最大の目標だった優勝を逃し、監督退任も決まった状況ながら3戦目まで持ち込み、力尽きた。未練などない。 ただ、ベンチ、そして球団フロントへ目を向けると、そこには無念の影が濃く落ちているようだ。単なる1シーズンの敗北にとどまらない。まるで1つの時代を失ったような喪失感。それは、あの日、9月23日。中村GMの死と無関係ではない。 今も耳に残っている。9月22日、午後8時50分だった。中村GMから着信があった。用件は野球とは別だったが、当然、タイガースの話題になった。この日のデーゲームで巨人に敗