告発した15人が「被害者」で全柔連の強化体制が「加害者」。1週間足らずの報道で、こんな構図が世間に定着しつつある。前代表監督は顔の見えない相手に実態も程度も定かでない「暴力」の担い手として批判され、社会的地位に致命傷が加えられた。 その一方で、告発した15人は今もJOCの配慮で氏名が伏せられている。JOCが匿名性を重視したことは、指導者より弱い選手の立場を思えばやむを得ないとしても、顔の見えない選手側の要求だけが次々と形になっていることに違和感を覚える。 選手個々が「暴力」や「パワーハラスメント」で具体的にどんな実害を受け、忍従を強いられたのか、いまだに明かされていない。だから、15人の苦しむ顔が痛みを伴って伝わってこない。 近く選手の聴き取り調査に当たる橋本聖子JOC理事は「選手には訴えた責任がある。あまりにもプライバシーを守りすぎると改革ができない」と指摘する。より具体的で詳細な被害が