「届く表現」の舞台裏では、各界の「成功している表現活動の推進者」にフォーカスしてます。今回は、超絶技巧を駆使した輪島塗の作品で世界のセレブを魅了する北村辰夫氏にお話を伺いました。 もともとは生活のためだったんです。僕は輪島の生まれではありますが父親は漁師ですし、一度都会に出て地元に戻り、見ず知らずの輪島塗の世界に飛び込んだのは、年齢的に遅いとされる21歳のときでした。そこから修業を重ねて自分の工房を持ったものの、結婚して子どもができ生活を支える重さを実感して初めて、自分の漆の世界をいかにつくるかの模索が始まったといえます。 伝統が重視される輪島塗の世界で、「よそ者」視点で実感したのが「自分たちはモノづくりのメーカーとして力をつけねばならない」ということ。海外のオークションでは最高峰の漆の仕事を下見会で実際に手に取ることができると知り、35歳の初めての海外旅行でロンドンのオークションに行き、