タグ

ブックマーク / tanpen.jp (8)

  • 終末農園 - 短編 第63期 #16

    作者: 朝野十字 ウェブサイト: 朝野十字のゲーム館 文字数: 1000 ☆優勝作品 よく太った部長は私の履歴書を一瞥して言った。 「フリーターさんだね」 「いいえ派遣です」 「フリーターさんの派遣だね」 「…………」 「そう。君の仕事場は地下だよ」 部長は私を連れてエレベータに乗り込んだ。大企業の高層ビル内の高速エレベータは足が浮くほどの速度で奈落の底へ落ちていった。地下の野菜工場管理の仕事という話だったが、扉が開くと、そこは農園だった。巨大な地下室は天井が見えないほど高く日光と変わらぬ暖かな光に満ち、畑の中の畦道を野良着姿の人たちが歩いていた。 「遺伝子改良による自律農業すなわち作物自身が管理する最先端工場だ」 部長が老人を呼び止めた。老人は頬にトウモロコシの粒を付けていた。部長がテレビのリモコンのような装置を向け、リモコンに表示された数字を私に見せた。老人を連れてエレベーターに乗り、

    nakanekoto
    nakanekoto 2008/01/27
    とうもろこしの収穫
  • 無色 - 短編 第64期 #13

    作者: kawa 文字数: 394 起き抜けに紅色のカーテンを勢い良く開くと、白紙よりも鮮やかな雪景色が広がっていた。この地域では冬でも降雪がめったになくて、今も雪は降っていないのだけれど、確かに玄関先には雲のようなものが地表を覆っていて、僕はすっ転びそうになりながらズボンを履き替え、ボタンをちぎりそうな勢いで上着を替え、毛皮のコートを羽織り階下に行った。両親の姿はない。チャンスだ。僕は扉を蹴飛ばし外に出、家の近くの公園に走ろうとした。その時にうっかり足を滑らせて頭を打った。雲は守ってくれなかった。 目を開けると、素っ気ない白色で一面が塗られた部屋にいた。ベッドも白いし服装も白い。目の前の女性の顔も白い。 「ほんまに、信じられん子やわあ。あんな所で頭打ちよるなんて」 「気ぃ付けぇよ。そんなことばっかしよるんやったら、おちおち出掛けることも出来へん」 二人は笑い合っていた。なるほどと僕は思っ

  • 剥がれてしまったので - 短編 第64期 #11

    作者: わたなべ かおる ウェブサイト: なべトーク 文字数: 1000 爪が剥がれてしまったので、医者に行った。 ちょっとした不注意で、左手の親指の爪を柱に突き立てるようにひっかけてしまった。数ヶ月前に心身の疲れから、あまり事がとれず、そのときの痕跡がくっきりと爪に現れていた。ガタンと真横に一筋、この部分が作られる頃に栄養不足だったのだよと、責め立てるように爪がくぼんでいる。そこで折れるだろうな、と思っていたら、やはり折れた。気をつけているつもりでも、こういうことは、避けられない。 まだ伸びきっていなかったので、生爪が5ミリほど剥がれた。爪が剥がれると破傷風になる。それが怖くて医者へ行った。 「どうしましたか」 「爪を柱にひっかけてしまいました」 私は一応、剥がれた爪を持参した。もげた腕や脚をつなぐように、爪も元通りに戻してもらえたらと思った。 「これは、当に柱にひっかけたのですか」

  • お支払いはカードで。 - 短編 第64期 #2

    作者: Draw 文字数: 998 カードで。 口癖になってしまったみたいだ。 なんて素晴らしいんだろう。 これさえあればどんなものだって買える。 所詮世の中は金。何で今まで気付かなかったんだろう。 「お支払いは?」「カードで。」 なに、後で返せばいいんだ。後でね。 仕事も辞めて遊んで暮らすことにした。 今日も起きると、予約しておいたリムジンが出迎える。 確か、ママは宝石を欲しがってたな。 このリムジンの使用料は勿論、何から何までカードで払う。 どんなものも最高級品でないとね。 それにしても、貧乏人は可哀想で馬鹿だ。 なんでカードを作らないんだろう。 それに引き換え、僕は天才だ。僕は偉いぞ。 リムジンが宝石店に着く。 もう一回行くのは面倒だから、あれもこれも全部買ってあげよう。 初老の店員が何故か頭を下げてきた。恐れ入ったのだろうか。 店員は口を開いた。 「お客様のカードは会社側で引き止め

  • 擬装☆少女 千字一時物語9 - 短編 第54期 #16

    作者: 黒田皐月 ウェブサイト: 邪装空間 文字数: 1000 ○予選通過作品 女の子って良いな。硬質じゃない感じ、フォーマルなスーツを着ていてもどこか柔らかみがあって、おしゃれしてふわふわな洋服を着ているのを見たときなんか、僕の心もふわり暖かく心地よくなるみたい。 僕だって女の子が好きだよ。だから髪の手入れとか顔の脂汚れとかムダ毛の処理とか、いつも気にしてちゃんとしてる。でも僕は小柄で痩せっぽちでカッコ良くなくて、女の子にモテたことなんか一度もない。それでも僕は女の子を見ると良いなって思って、僕のものになったらなっていつだって思ってる。 だから、他の人が聞いたらだからってわかってくれることはないと思うけど、僕、眠るときはネグリジェを着て寝てるんだ。だって、眠るときは身も心も暖かく、心地よく寝たいじゃない。柔らかいネグリジェは、身体も暖かく包んでくれるんだよ。怖い夢を見ても大丈夫、ネグリジ

    nakanekoto
    nakanekoto 2007/11/20
    ★★★
  • スウィートサワー - 短編 第54期 #20

    作者: 夕月 朱 文字数: 879 ☆優勝作品 この世界から蜜柑が姿を消して、もう7年。当初の混乱も収まり、世間は蜜柑のない生活に順応しつつある。俺も慣れた。勿論それも、以前よりは、という意味でしかない。俺はまだ、あの橙色の果実のことを思い出すことがある。眠れない夜なんかに、時々だ。 「蜜柑って、どんな味だったかしら?」 隣の女がそう尋ねる。 「甘かったのさ」 「甘いんだ?」 「ああ、そして酸っぱかった」 「甘酸っぱいの?」 「いや、違う。甘くて、酸っぱいんだ」 そうだったかしら。彼女はそう呟いて、爪の手入れを再開する。その薄い、美しい爪に、あの原色の分厚い皮が挟まることはもう有り得ない。俺は蜜柑のことに思いを馳せる。 どうしたって、時は過ぎる。蜜柑があろうがなかろうが、俺は年をとり、彼女は妊娠して子供を生み、その子供は蜜柑をべることなく、大人へと成長してゆくのだろう。もう誰も、蜜柑を

    nakanekoto
    nakanekoto 2007/11/20
    ★★★★みかんの話をしてるだけなのに切ない
  • 嘘を吐いているのは誰だ? - 短編 第54期 #18

    作者: 二歩 ウェブサイト: puts' 文字数: 1000 ○予選通過作品 後味の悪い事件だった。 嬰児誘拐。 昼過ぎから降り出した霧雨。ショッピングセンターの入口で、母親が折り畳み傘に手間取っている僅か数分の間に、ベビーカーに乗せられていたはずの娘が消えた。まだ首も座らぬ2ヶ月の乳児だった。4時間後、父親の職場に身代金2億円を要求する電話が入った。 状況から店頭で着ぐるみのアルバイトをしていた男――以前、被害者の父親の同僚だったことがあり、母親とも面識があった――が犯人だと断定されたが、事件発生から18時間後、県警に身柄を確保されたとき男の手元に娘はおらず、また共犯者の痕跡もなかった。誘拐の直後、娘をバラバラにして複数のゴミ集積場に捨てたと男は証言した。身代金が要求されたとき既に娘は殺されていたのだ。そして、犯人が逮捕された時点で遺体のすべてはゴミ焼却場の炉の中に消えていた。 「奥さん

    nakanekoto
    nakanekoto 2007/11/20
    ★★★★時事ネタ。最後は怖いだろう。
  • 贋僕、贋冒険小説を書く - 短編 第54期 #22

    第54期 #22 贋僕、贋冒険小説を書く 作者: qbc ウェブサイト: ツイッター 文字数: 1000 ○予選通過作品 (この作品は削除されました) Twitterに呟く はてなブックマークに追加 予選時の票(2) 決勝時の票(3) 編集: 短編

    nakanekoto
    nakanekoto 2007/11/20
    ★★★☆語尾のニダがなければ最高なのに。蛇足だね。
  • 1