作者: 朝野十字 ウェブサイト: 朝野十字のゲーム館 文字数: 1000 ☆優勝作品 よく太った部長は私の履歴書を一瞥して言った。 「フリーターさんだね」 「いいえ派遣です」 「フリーターさんの派遣だね」 「…………」 「そう。君の仕事場は地下だよ」 部長は私を連れてエレベータに乗り込んだ。大企業の高層ビル内の高速エレベータは足が浮くほどの速度で奈落の底へ落ちていった。地下の野菜工場管理の仕事という話だったが、扉が開くと、そこは農園だった。巨大な地下室は天井が見えないほど高く日光と変わらぬ暖かな光に満ち、畑の中の畦道を野良着姿の人たちが歩いていた。 「遺伝子改良による自律農業すなわち作物自身が管理する最先端工場だ」 部長が老人を呼び止めた。老人は頬にトウモロコシの粒を付けていた。部長がテレビのリモコンのような装置を向け、リモコンに表示された数字を私に見せた。老人を連れてエレベーターに乗り、