『枕草子』の世界へようこそ すこしの時間、老犬ラフェットと一緒に、この迷宮で道に迷っていただけると嬉しいです。 名を呼べば犬あらはれる花野かな 藤原実方研究 --陸奥守就任をめぐって-- 金子規雄 宮城教育大学 国語国文 (昭和55年8月) 正暦六年(995)正月十三日の除目で、従四位上藤原実方(さねかた)は、左近衛中 将兼任で陸奥守に任命された(『本朝続文粋巻第六奏上』『中古歌仙三十六人伝』)。 正暦六年は二月二十二日に改元となり、長徳元年となった。 九月二十七日、実方は陸奥守として赴任の奏上のため、内裏に伺い、殿上の間で酒肴の 接待になり、のち昼御座において正四位下に叙せられ、禄を与えられた。ただ「重喪」 のため、精進肴を与えられるにとどまった(『日本紀略』『権記』)。 以上の記事には、ある”謎”が含まれている。…陸奥国は大国である。大国の国守相当 官(鎮守府将軍も)は「従五位