先日亡くなられた、作家・漫画原作者の小池一夫さんの『人生の結論』(朝日新聞出版)という著書の冒頭に、こんなエピソードが出てくるのです。 先日、友人が亡くなりました。彼は、世間では成熟した大人の代表のような扱いを受けていました。皆が、彼のことを粋な通人と呼びました。 骨董をたしなみ、古書を集め、家に行けばチェロが置いてありました。酒に詳しく、葉巻を吸い、食通で通っていました。 しかし、長年の付き合いのある僕は知っています。彼は収集した本をほとんど読んではいませんでした。美しい本棚のための本でした。チェロも弾くことはできませんでした。センスのいい男でしたが、センスのよさだけで世を渡っていました。 しかし、僕が、彼がすごいなと思うのは、本物の成熟した人間ではないのに70で死ぬまで、その一見成熟した大人の男だというスタイルを貫き通したまま死んでいったことです。 死ぬまで吐き通した嘘は、ある意味真実
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