量子の社会哲学 革命は過去を救うと猫が言う [著]大澤真幸[評者]柄谷行人(評論家)[掲載]2010年11月21日著者:大澤 真幸 出版社:講談社 価格:¥ 2,310 ■異質なものの遭遇 新たな意味へ 量子力学以前の物理学では、観察者を超えた、超越的な視点あるいは超越的な何かが仮定されてきた。たとえば、相対性理論も光速を一定と仮定することで成り立っている。ところが、量子力学がもたらしたのは、そのような超越的視点がもはやないという認識である。光子や電子は、粒子であり且(か)つ波動である。しかし、それらを同時に知ることができない。観察するかしないかで、そのあり方が変わるからだ。そこでは、いわば、結果が原因を創(つく)りだす。といっても、観察者に問題があるのではない。対象そのものが不確定的に存在するのだ。 本書は、このような科学認識のあり方を、古代から中世・近代を経て今日にいたる知的変容にお