海老坂武『加藤周一:20世紀を問う』(岩波新書2013)拝読。 全体の印象は、日記や時代考証を基にしながら時に『羊の歌』の「誇張、矛盾」に言及するなど、一定の「加藤神話」の相対化を孕みつつ、「嘘つき光っちゃん」ならぬ「嘘つき周ちゃん?」の横顔を友人の立場から追う、というもの。 加藤周一氏に対して、私は微妙な態度でいて、尊敬しつつも、ある種の「加藤周一信仰」には適切な距離が必要とも感じてきた。加藤に比して、不当な過小評価をされている現代日本知識人がいるから。たとえば「近代」との格闘では荒正人が、「マルクス主義」との格闘では日高六郎が、文章の洒脱さでは林達夫が、それらの点では加藤よりも優れていると思う。 *** 海老坂武『加藤周一』で興味深かったのは、第一に1947年の加藤周一と荒正人との「論争」。1947年、加藤は論文「IN EGOISTOS」で荒正人