「世界史のなかの満洲帝国(宮脇淳子)」(参照)は書名通り、満洲帝国を世界史に位置づけようとした試みの本だが、その試みが成功しているか妥当な評価は難しい。いわゆる左翼的な史学からすれば本書は、珍妙な古代史論と偽満州へのトンデモ本とされかねないところがある。史学学会的には概ね無視ということになるだろうが、おそらく日本には本書をカバーできる史学者は存在していないのではないかと私は思う。 一般読書人にとって新書としての本書はどうかというと、率直に言えば、有無を言わず買って書棚に置いておけ絶対に役立つとは言える。各種の事典的情報がコンサイスにまとまっているので便利だ。ブログに書評を書いてブックオフへGO!という本ではない。ただ、読みやすさと読みづらさが入り交じる奇妙な読書体験を強いられるかもしれない。 言うまでもなくと言いたいところだが、宮脇淳子は岡田英弘の妻であり、その史学の後継者である。岡田英弘