上野 英信 『天皇陛下万歳―爆弾三勇士序説』(筑摩書房 1972) 唐突に一本の電話が作者のもとにかかってくるところから本書ははじまる。上野が爆弾三勇士について調査を進めていると聞いた肉親が、それを拒絶するためにかけてきたのであった。なぜ彼女は三勇士について触れられたくないのか。三勇士といえばとりあえずは「軍神」である。それを顕彰までいかずとも、調査によってその実像を明らかにすることが、かくも激しい否定の感情を肉親に喚起するとは。これにより、自分が三勇士について無知であることを知らされる。そして本書を読む進めるにつれ、三勇士という「神話」の一端を垣間見ることができる。 爆弾三勇士とはいうまでもない。上海事変のさなか、蒋介石軍が築いた鉄条網を爆破せんと江下武二、北川丞、作江伊之助各一等兵が突入し、自らも爆死したことが喧伝され構成された神話である。いわば彼らは「『三勇士』にさせられた」(歩兵第