タグ

2009年5月18日のブックマーク (1件)

  • 水 - qfwfqの水に流して Una pietra sopra

    先頃入手した一冊の文庫について書いてみたい。 佐多稲子著『女の宿・水・人形と笛 他七編』。カバーの表には、大柄の葉をもつ草花と「女の宿」の文字が彫られた版画(芦川保)に、明朝体で佐多稲子短篇集という墨文字が乗っている。素朴な味わいのある好い装訂だ。三十年あまり前に刊行された旺文社文庫の一冊で、収録された小説十篇には未読のものも少なくないが、これを購入したのは表題にもなった「水」を再読したいと思ったからである。 「水」は文庫にして九頁たらずだが、巻末の解説で坂上弘が「処女作の『キャラメル工場から』をほうふつさせるような素材の「水」は、佐多さんの領であり、一つの頂点でもあるだろう」と書くように、短篇の代表作の一つといっていいだろう。以前この小説を読んだのは、大江健三郎の『小説の経験』(朝日新聞社)に収められた「中野重治、佐多稲子の水」がきっかけである。大江はTVでの連続講演をもとにしたこ