激しかった雷雨は小雨に変わっていた。 家庭教師のアルバイトからの帰り 大学生の伊賀崎俊(22)は 千葉県と都心を結ぶ 私鉄・北総線新鎌ヶ谷駅のホームにいた。 2003年9月4日午前零時20分。 5分前に着くはずの電車はまだ来ない。 雷雨によるダイヤの乱れは続いていた。 終わったばかりのサッカー合宿の内容を 携帯メールでやり取りしていると 男性のふらつく影が視界をよぎった。 酔っていた。 崩れるように1メートル下の線路に落ちた。 ホームには二、三十人いたが動かなかった。 いつ電車のライトが迫ってくるか知れない。 が、意を決して飛び降りた。 男性はレールの間に倒れ動かない。 上体を抱き起こす。 「重い」と感じた時 乗客の一人が降りてきた。 渾身(こんしん)の力でホームに押し上げた。 男性は腕を骨折していた。 翌日、同県印西市の自宅で 俊の話に母の真理子(50)は 「何てことしたの。 非常ベルも