【憲法論について】統治を担うのは天使ではなく人間である。それ故に、統治には何重もの警戒的抑制装置を設けておかなければならない(ザ・フェデラリスト51篇)。権力を行使する人間の能力の限界を認め、その抑制を図ることに立憲主義の理念はある。そして、その立憲主義の理念を、まさに第二次大戦の惨劇という統治の劇的な失敗の経験に基づき、安全保障政策の分野にまで拡大したことに日本国憲法の独自性、平和主義の意義がある。今回の安保法制は、単に自衛隊の活動の範囲を拡大するというのみならず、武力行使の憲法的統制という日本国憲法の平和主義の基本理念を空文化するものであり、「量的」というよりもむしろ「質的」に違憲であると考える。自国に対する武力攻撃がなければ、武力の行使をしてはならない。従来、政府が採用してきた集団的自衛権行使禁止原則は、客観的で、政権を担う人間の判断を越えた拘束力をもっていた。しかし、今回の安保法制
1990年代以降の「集団的自衛権論」は、アメリカの「自衛ならざる戦争」に日本が参加することを「集団的自衛権」として正当化しようとする間違った前提から出発している。昨年からの議論を見ても、安倍総理大臣の強調するペルシャ湾での掃海活動が「集団的自衛権」の行使とされるためには、そこで行われている戦闘行動がアメリカの自衛権行使でなければならないはずであるが、どんな状況がそれに該当するのかは説明されていない。この点、政府は、「必要最小限の手段」という要件で歯止めがかかるとの説明に終始しているが、そもそも、どこまでがアメリカの「自衛権」なのかが整理されなければ、日本の「集団的自衛権」の範囲も画定できないはずである。
集団的自衛権は個別的自衛権の共同行使ではなく、第三国による「同盟」国への攻撃を自国の死活的利益への攻撃とみなして反撃することを指す。また、これを国連憲章51条は「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利」と表現し、あたかも国家に固有の権利があるがごとく表現しているが、国連憲章が主権国家の対等平等な併存を前提としていること、主権国家のあり方はほかならぬ当該国家の憲法によって定められていることが前提だから、国連憲章51条は日本国憲法を上書きするように日本が集団的自衛権を行使できる、ないし行使しなければならないと日本に命じているといった見解は、日本の主権を侵害するものと言わなければならないから失当である。そもそも固有の権利をもつのは個人だけであり、国家は個人に立脚して成立するから国家固有の権利などといった発想が立憲主義と矛盾する。したが
1.砂川最高裁判所判決は、集団的自衛権の発生根拠とはなり得ない。この判決は、駐留米軍が憲法9条2項に定める「戦力」に該当しないことを明らかに判決です。判決文に出てくる「国家固有の自衛権」は、個別的自衛権のみを指します。そもそも、サンフランシスコ講和条約締結と同じ日に結ばれた旧日米安保条約では、「日本国は、本日連合国との平和条約に署名した。日本国は、武装を解除されているので、平和条約の効力発生の時において固有の自衛権を行使する有効な手段をもたない」ことが前提となっています。そこで、日本の安全をもっぱら米軍に頼るという占領政策の継続が、日米間で合意されたのです。 2.平和安全法案は、戦争権限法である。日本国の相手国が、開戦の通告(所謂、宣戦布告)をした場合、日本政府は、戦争状態に入ります。その場合、日本政府は、どのような対応をとるのでしょうか。外務省は天皇を対外的国家元首として扱っていますが、
上記のご質問のうち幾つかへの回答を補足させていただきます。質問3についてですが、昨年7月1日の閣議決定および武力攻撃事態法案において明記されている集団的自衛権は、それを行使するのは「存立危機事態」だけであるとしており、国連憲章51条が行使を容認するものよりも限定がかかっているのは確かです。ただ、それにしても集団的自衛権の行使であることに変わりはありません。武力攻撃事態法案の文言による限定にもかかわらず、「他衛」という集団的自衛権の性質が変わるわけではなく、憲法上容認される余地はないと私は考えます。質問4についてですが、現に武力行使を行っている他国軍への後方支援はそもそも武力行使の一環であり憲法9条1項違反であると私は考えます。しかも今回の法案(重要影響事態法案および国際平和支援法案)における後方支援は、旧イラク特措法の「非戦闘地域」という限定もなく「現に戦闘行為が行われている現場」以外で実
憲法判例百選の執筆者198人にアンケート調査を行い、151人の方々から返信をいただきました。 (調査期間6月6日~12日 他界した人や辞退した人などを除き、アンケート票を送付) 今回の安全保障法制についてのご意見を、ご自由に、ご回答いただきました。そのなかで、ご自身の見解を実名で公開してもいいとされた方々です。 お名前をクリックしますと、解説内容がご覧になれます。 ※ご回答いただいた順となっています。
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