――ベトナムにいったい何があるというんですか? 年の瀬も押し迫った、2022年12月30日。無事に家の大掃除を終えたわたしたちは、すかすかのトランク片手に成田空港へと向かいました。 そう。今からわたしたちは、太陽の国ベトナムへと飛び立つのです。 飛行機から見降ろす東京の夜ベトナムになにがあるのかと問われれば、答えられることはたくさんあります。 耳をつんざくクラクションと、途切れることのないバイクの流れ。絶妙なバランスで積み上げられた鮮やかなフルーツ。 昼間から中国将棋に興じるおじさんたちの横を、働き者の女性たちが悠然と通りすぎてゆきます。 または、豊富な食文化。 フォーにブンチャー、ミーサオにバインミー。ランチのあとのほの甘いエッグコーヒーは、旅人の心を簡単に癒します。 一方では、ビール1本80円という低い物価や、絶望的なほどに混乱した交通状況は、ベトナムの「今」の社会水準を反映したもので