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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (7)

  • 「世界文学」の日本代表が夏目漱石ではなく樋口一葉である理由

    世界文学全集を編むなら、日本代表は誰になる? 漱石? 春樹? 今なら葉子? 審査は、世界選手権の予選のようになるのだろうか。投票で一定の評価を得た著者なり作品が、トーナメントを勝ち抜いて、これぞ日本代表としてエントリーするのだろうか。 スポーツならいざ知らず、残念ながら、文学だと違う。春樹や葉子ならまだしも、夏目漱石は予選落ちである。 なぜか? 『「世界文学」はつくられる』に、その理由がある。近代日語の礎を築いたことで誉れ高い漱石でも、世界的に見た場合、西洋文学のコピーとして低く評価されているという。 「世界文学」での漱石 『坊ちゃん』『』が有名だし、教科書で『こころ』を読んだ人もいるだろう。何と言っても千円札の顔だから、諭吉よりは見慣れている。やたら有難がる人もいるのは、ザイアンス単純接触効果じゃね? と思うのだが、彼の造語とされる「沢山」「反射」「価値」「電力」は、人口に膾炙してい

    「世界文学」の日本代表が夏目漱石ではなく樋口一葉である理由
  • 女の子の匂いを再現する

    女の子の匂いをご存知だろうか? 漂ってくる「匂い」というより、すれ違うときにクる「あの感じ」といったほうがいい。あるいは、部屋に入ったとき、女の子がいる(いた)空気のようなもの。大事なのはカッコ()の中で、視覚的ものではない。「さっきまで女の子がいた部屋」でも分かるし、建物内ならある程度たどるのは可能だ。 最初は、私の変態的妄想力が産み出した幻臭かと思った。「女の子って、どうしてあんなにいい匂いがするのだろう」と悶々したことがある。が、同志の意見を総合し、私の経験を重ねると、どうやら妄想ではなさそうだ。 それは、いわゆる「せっけんの香り」だろうか。石鹸そのものに限らず、中高生が滴らせているシャンプーやボディケア香や、デオドラントのメチルフェノール系の匂いなどが相当する。そうした、後付けの合成香料をもって、我々は「女の子の匂い」とみなしているのだろうか。 たとえば、「ビオレさらさらパウダーシ

    女の子の匂いを再現する
  • リアル君の名は。おっさんが女の子の匂いを買ってきて身につけたら、たまらない背徳感を味わえた

    「女の子の匂い」をご存じだろうか? 「臭い」ではなく「匂い」である。 よく言われる、せっけんの香りではない。デオドラントや柔軟剤、コンディショナー、乳液、ハンドクリーム、化粧水、オーラルケア、ファンデなどの香料、フレグランスでもない。それらは、女の子から漂ってくる様々な匂いを構成する要素にすぎない。 そうした、外づけの化合物ではなく、女の子自身から発する匂いだ。ココナッツミルクや白桃を想起させる、何とも言えない、「匂い」というより、「あの感じ」といえば分かるだろうか。心地よく、はっとする感じ、あるいは身体的にオンになる感覚である。 これは、わたしの変態性が生み出した妄想にすぎぬ、と考えていた。しかし、優れた先人たちの研鑽と研究の末、「女の子のいい匂い」とは、以下の物質であることが判明している。 ・高級脂肪酸と安息香酸エストラジオール ・ラクトンC10、C11 では、女の子の匂いを再現するこ

    リアル君の名は。おっさんが女の子の匂いを買ってきて身につけたら、たまらない背徳感を味わえた
  • 死ぬのはなんでもない。恐ろしいのは、生きていないということだ『レ・ミゼラブル』

    世界で一番短い手紙は、作品の売れ行きを心配した作家が送った「?」と、出版社の返事「!」だという。その作品が『レ・ミゼラブル』なのは、エスプリが効いてる。膨大な紙数を費やした大長編の評判が、ただの一文字で伝わってくるから。 ちくま文庫で全5巻、確かに長い。長いだけでなく、スタイルも手を変え品を替えてくる。随筆や論説、脚のような体裁や詩や歌にまで様々だ。淡々とした書き口だったのが、ときに抒情的に翻り、さらに叙事詩的になり、なんでもやりたいことやってやれという熱情に満ち満ちている。 この情熱が、伝染する。ヴィクトール・ユゴーの輻射熱が、ヒリヒリするほど伝わってきて、一種はずみのようなものをつけて、一気に、滑空するように読める。子どものころ『ああ無情』でストーリーは知っていたものの、これほど作家自身が饒舌な作品とは知らなかった。ジャン・ヴァルジャンとコゼットの軸で物語は貫かれているものの、その背

    死ぬのはなんでもない。恐ろしいのは、生きていないということだ『レ・ミゼラブル』
  • 人類は飛行をどのように理解したか『飛行機技術の歴史』『飛行機物語』

    最近知って、驚いた事実。 “オーヴィル・ライト(ライト兄弟の弟)が死んだとき、ニール・アームストロング(月面着陸した人類初の宇宙飛行士)は、すでに17歳だった” ライトフライヤーからアポロ11号まで、飛行技術の革新性は、スピードというより跳躍だ。だが、この時代だけが凄いのではない。「飛ぶとは何か」は、常に想像され、試され、実証されてきた。「飛行機は、なぜ飛べるのか」をトートロジーに陥らずに振り返ると、人類が飛行を理解した歴史になる。 『飛行機技術歴史』は、ライトフライヤー以前と以後の二つに分けている。前者は、ダ・ヴィンチの羽ばたき機から始まって、ニュートンの科学革命、空中蒸気車、グライダーの試行錯誤とデータの積み重ねの歴史になる。「なぜ飛べるのか」に対し、具体的に跳ぼうとした人々のドラマが描かれている。ライト兄弟は、こうした既存技術を適用した結果に過ぎないという。もちろん飛行制御を考慮し

    人類は飛行をどのように理解したか『飛行機技術の歴史』『飛行機物語』
  • 40超えたら突き刺さる『タタール人の砂漠』

    ある種の読書がシミュレーションなら、これは人生の、それも自分の人生の「手遅れ感」の予行演習になる。若い人こそ読んで欲しいが、分からないかも。歳経るごとにダメージ増、over 40 からスゴ。 この感覚は、カフカの『掟の門』。かけがえのない人生が過ぎ去って、貴重な時が自分の手からこぼれ去った、あの「取り返しのつかない」感覚に呑み込まれる。 大事なことは、これから始まる。だからずっと待っていた。ここに来たのは間違いだから、気になれば、出て行ける。けれど少し様子を見ていた。習慣のもたらす麻痺が、責任感の強さという虚栄が、自分を飼いならし、日常に囚われ、もう離れることができない―――気づいたらもう、人生の終わり。 カフカの再来と称されたブッツァーティは、『神を見た犬』でも示すとおり、寓意性の高い幻想譚を描く。物語の面白さにうっかり釣り込まれると、極めて当たり前の、普遍とも言えるメッセージを突付

    40超えたら突き刺さる『タタール人の砂漠』
  • 「アンナ・カレーニナ」読むと結婚が捗るぞ

    人生を滅ぼした女から、何を学ぶか。 「女とは愛すべき存在であって、理解するためにあるものではない」といったのはオスカー・ワイルド。これは、夫婦喧嘩という名のサンドバック状態になってるとき、かならず頭をよぎる。 結論から言う。論理的に分かろうとした時点で負け、相手の感情に寄り添えるならば、まだソフトランディングの余地はある。 しかし、夫と不倫相手は、そこが分かっていなかった。体裁を繕うことに全力を費やしたり、売り言葉に買い言葉で応じたり。優越感ゲームや記憶の改変、詭弁術の駆け引きは目を覆いたくなるが、それはわたしの結婚でもくり返されてきたことの醜い拡大図なのだ。 投げつけあう「あなたの言っていることが分からない」の応酬は、「どうせ分かってるくせになぜそういう態度をとるの?」の裏返しだ。大いに身に覚えがあるわたしには、ヴロンスキー(不倫相手)の利己的な愛の吐露が身に染みる。 「じゃあ言ってくれ

    「アンナ・カレーニナ」読むと結婚が捗るぞ
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