20世紀最大の知性、クロード・レヴィ=ストロース(1908-2009)の遺稿のうち、日本に関するものを採録した "L’autre face de la lune: Écrit sur le Japon" が2011年にフランスで刊行され(Editions du Seuil 刊)、大好評を得たそうだが、それから3年をへてようやく『月の裏側──日本文化への視角』(中央公論新社 刊)として邦訳が出たばかりである。 レヴィ=ストロースが初めて日本の土を踏んだのは70歳近くになってからに過ぎないが、彼と日本の出会いは決して浅くなく、6歳の時にジャポニスムに感化された画家である父から、善行のたびにごほうびでもらった浮世絵のコレクションがその馴れ初めなのである。「悲しき熱帯」ブラジルとの濃密なランデヴーが彼の業績の大部分を占めたため(今夏は別の意味で「悲しき熱帯」になってしまったが)、日本への関心は初恋