この物語は2014年の初めごろ、イーストビレッジのお気に入りのバー、EVSで飲んでいたところから始まる。何度も言っていることだし、聖マルコに誓ってもいい。EVSは断じてダサいバーではない! ニューヨークでハッピーアワーをやっているバーを見つけるのはひどく難しい。僕の行きつけだから、みなさんはどうか通わないでほしい。本当に来ないでね! ……とにかく、2014年の2月ごろ、ハッピーアワーに1本20ドルのワインを飲んでたら、iPhoneがなくなった。誰かがテーブルの上から盗んだようだった。いやあ、感心した。拍手喝采だ。きっとそいつはその夜だけで、20台くらいは電話を盗んだんだろう。携帯電話を盗むにはうってつけの場所だ。天才的だよ。ブラボー。 iPhoneがなくなったことに気づいた僕は、すぐに自分の番号に電話した。繋がったのは留守電。電話が死んだ時の世界共通語だ。僕のiPhoneは、消えた。 それ