昨年の初夏、父が亡くなった。ある日、突然動けなくなり末期の肺がんだと診断された。担当医師は「夏を越えるくらいまで」という。告知をどうするか、私たち家族は悩んだ。 本書は日赤医療センターで、進行がん、特に肺がんの治療を専門とする國頭英夫医師が、日本赤十字看護大学の1年生に行ったコミュニケーション論の講義録である。 看護師を目指してこの大学に入ったとはいえ、ついこの間まで高校生の素人に何を教えたらいいかと悩んでいた著者だが、このゼミを選んだ学生13人は真剣だった。幼いなりに、世の中を知らないなりに必死に課題にくらいついていく。その過程は正直、涙ぐむほどがむしゃらだ。医学生にさえこんなに真剣に聞いてもらうことはなかったそうだ。 がんの治療は日々進歩しているが、國頭氏の担当する進行がんは、ほぼ亡くなる病気である。不安を抱えながら闘病している患者を、医師も看護師も見放すことはできない。 「死んでいく