現在、全世界で約5000万人の患者とその家族が苦しんでいるアルツハイマー病は、完全に治す方法がないことで知られている。高齢化が進む日本で、今後アルツハイマー病による認知症がさまざまな課題を発生させていくことは想像に難くない。 しかしこの病に関する研究が進み、現在では治療への大きな希望が見えてきているのだという。本書はそんなアルツハイマーという病の征服に挑んだ人々の挑戦記だ。 青森に住む、ある家族の話から本書は始まる。その一族は、長身の美男美女が多い家系でよく繁栄したが、なぜか40代、50代になると、認知症を発症する者が多かった。患者の死後に解剖すると、通常はみっしりと折り重なり隙間などないはずの大脳が、くるみのようになり、脳溝がすかすかに広がっていたという。 ここから話は一気に、アルツハイマー病の正体を突き止めようとする人たちの壮大なバトンリレーへ転じる。ある人は利他的な気持ちから克服の道