研究の背景 マヤ文明研究の黎明は新しく、現在の研究者のコンセンサスとしての「マヤ文明観」が形成されたのは1990年代に入ってからのことです。その礎となった調査のひとつは1950~1960年代にティカルで行われた大規模調査でした。そのためティカルでの調査から数えると、マヤ考古学の歴史はたかだか100年にも満たないと言うと驚くでしょうか? この短いマヤ考古学史の中でティカルのような大遺跡だけではなく中小遺跡も対象にすべきという指摘の下、現在までに遺跡のサイズによるデータの偏りは是正されてきました。一方で遺跡の中で対象となるマウンド(建造物の痕跡)の偏りは現在も尚是正されていないのです。やはり皆、巨大な神殿や宮殿を掘って「お宝」を見つけたいようです。他方でその甲斐あって古代マヤ文明の中でエリート層の文化については良く知られています。皆さんもきっと色鮮やかな多彩色土器や精巧なマヤ文字入りのレリーフ