朝早く眼が覚めると、「ダークナイト」のことを考えていた。鑑賞から数日経っても、バットマン、デント、そしてジョーカーという3人の人物像についての強烈な記憶がよみがえる。恐ろしい映画である。 ジョーカーはバットマンが戦う敵であり、究極の悪である。にもかかわらず、幾度ものチャンスがありながら、バットマンはジョーカーを殺せない。この設定は、一見したところ、バットマンに「最後の良心」があることを描いているように見える。しかし、作者の真意はそんなに甘いものではないだろう。 バットマンが実際にやっていることといえば、拉致(しかも国際的な)、盗聴(しかも全市民からの)、癒着(しかも警察幹部との)、裏帳簿、暴力、そして殺人と、第一級の犯罪である。これだけの罪をおかしながら、ジョーカーを殺せないのは、不条理であり、滑稽だ。 一方の、正義の騎士、バーヴェイ・デントは、駆け出しのころにtwo faceと呼ばれてい