1カ月前までカキの殻をむく打ち子たちでにぎわっていた水産加工会社は廃業に追い込まれ、静まりかえっていた。全国屈指のカキの生産量を誇る広島県江田島市で3月14日、川口水産社長の川口信行さん(55)ら従業員8人が殺傷された。殺人などの容疑で再逮捕された中国人技能実習生、陳双喜(ちん・そうき)容疑者(30)は広島県警の調べに「叱責する社長に恨みがあった」「職場のみんなにばかにされた」などと話し、動機は職場への不満だったとにおわせている。しかし、事件直前に中国に残してきた妻が別の男と“駆け落ち”し、激しく落胆していたという。事件の1カ月前、情緒不安定に陥った陳容疑者は中国人の友人に電話でこう叫んでいた。「中国人、みんな悪い!」。妻子を中国に残し来日 陳容疑者が技能実習生として日本にやって来たのは昨年5月だった。中国遼寧(りょうねい)省では農業を営んでいたが、「日本で金を稼ぎ、息子を大学に行かせたい